ピックアップ商工新聞
税金対策部会
国政通則法学習会 改悪でどうなる?
税務調査

 この改悪された新国税通則法は、3年前、納税者権利意章を策定せよとの国民世論に押された民主党がマニュフエストに掲げて政権を獲得したあと、手のひらを返したように昨年の11月30日に国会で公約を踏みにじって採決した「納税者義務憲章」とも言うべき法律です。

 この国税通則法の改悪のねらいは、㈰人権侵害の税務行政に法的根拠を与え、㈪所得税の最高税率や法人税率を引き下げながら、消費税中心へと移行させてきた税制を支え、庶民民大増税時代に備えるための徴税環境を整備することにあります。この改悪によって、白色・青色を問わずすべての業者に記帳を義務づけ、消費税の仕入れ税額控除否認や推計課税を今まで以上に行ないやすくする。また、今回あらたに「掲示」「提出」「留置き」という権限が税務署員の質問検査権に付け加えられましたが、これは懲役とか罰金刑を強化し、納税者に犯罪者意識を持たせて税務署具に従わせ、思い通りに調査を進めようとするものです。また、これまで明文化されていなかった事前通知についても、しなくても良い場合の例外規定をもうけるなど、全体として納税者の「義務」を羅列しながら納税者の権利を後退させようとするものになつています。

 ただし、この改悪案が上程・可決される課程での私たちの国会内外でのたたかいによって、この法律があくまでも本人の承諾を前提とした任意調査であつて、罰則をもって強制することを目的としたものではなく、従来どおり「税務運営方針はまもっていく」という国会での答弁や内容を盛込んだものとなったことは、この法律を理解する場合のキーポイントとなっています。

 新宿民商の税金対策部会では、今後この通則法の解説や「新国税通則法Q&A」などの資料をつかった学習を推進していきます。

 消費税の増税を許さない運動と、納税者の権利を国会において制定するという権利憲章の制定運動とあわせて、今後も学習と実践を一体に運動を推進していくことを確認しあつた学習会となりました。    

「染の小道」第3回総会 みんなの思いをまとめる ヒントがぎっしり

 この新宿で営業と暮らしを継続するために、まちづくりや地域産業の振興などにいっそう取り組む必要があります。新宿民商でも会員たちが地域や営業を発展させるイベントに取り組んできました。いよいよ9月に経営対策部会を中心に「夜のオリエンテーリング」を企画。街も会員も元気になるイベントにするためにはどうしたらいいのか。そのヒントを得るため、6月8日に東京信用金庫中井支店で開催された「染の小道」第3回総会を取材してきました。 落合・中井の妙正寺川流域の地場産業、染色を生かしたまちづくりイベントとして今年2月に取り組まれた「染の小道」。動員数は昨年の3倍近い1万2千人。参加店舗数でも昨年より5割増しの75店舗と、大成功を収めました。

 中井・落合の神田川流域、妙正寺川流域には大正期芸術家や作家が往来し「落合文化村」と呼ばれる地域が形成されました。昭和初期から染色関連産業や工芸家・職人が集まり集積産業として発展してきました。時代の変化を受けてこの伝統産業も地域商工観光業も苦境に立っている。これを打開したいという思いは、みんなの願いです。新宿区まちづくり財団や地域の町会・商店会を巻き込み、中井のシンボル故・赤塚不二夫氏のフジオ・プロダクションが参加しました。このイベントを通じて町に活気が出た、子供たちが町のことを誇りに思うと言ってくれたなど数だけでなく町の魅力を打ち出すことができました。 8人から始まった  「染の小道」は、横田和俊さん(新宿民商相談役)から交替し、新代表となった二葉社長の小林元文さんが家族旅行で行った先で見た鯉のぼりをヒントに「川に反物を展示する」というアイデアを思い付いたところから始まりました。

 2009年8人の合同展示からはじまり、2011年イメージがわくようにと、デザイナーの泉さんがCGを制作。河川の使用許可などを取るために新宿区の土木担当課に見せたところすぐに区長に提案が届き動き出したそうです。落合・中井地域のミニコミ誌の「おちあいさんぽ」が店舗との交渉をすすめていく過程で中井商工会の若手が応援するようになり、まちを上げての取り組みになっていったそうです。

 それぞれが漠然と持っていた想いを、一つのアイデアと具体的に伝わるビジュアルイメージと情熱が「染の小道」の原動力となり大勢の人を巻き込み、気持ちをまとめていくことになりました。

 現在では実行委員会を毎月開催、会則を定め、活動内容を8つのセクションに分け、事案の具体的執行をはかっています。月に2回はセクションや全体で会合を持ち、そのどれもが参加自由。「傍観者でなく参加者であって欲しい」と運営内容についても自由闊達に議論を行っています。実行委員には、地域住人のほかNPO法人の職員などまちを思う幅広い人々がかかわっています。地域の中小零細業者が数多くかかわっていることから、個々の個人事業が成り立つことがこうしたイベントを実行する足場となっていることを実感しました。みんなの思いをまとめるヒントがぎっしり詰まった総会でした。

 今後は、参加した染色作家や中小零細業者の営業と生活の持続可能性を高め、相乗効果で拡大していくことに期待します。 (E)

座 談 会

 「『絶望の国の幸福な若者たち』ってほんとう?」 高齢者と若者を分断する 「若者論」再考  社会問題に関心のある区内の労働者たちが中心になりはじまった、グラスルーツ・ラボ。今後の運動の在り方を模索し、発展の方向性を掴むことを目的としています。その第一回企画を取材してきました。  

 古市憲寿さん著「不幸な国の幸福の若者たち」は、時代時代の社会学者や評論家によって都合よく繰り広げられてきた「若者論」を当事者である若者の目線から批判的に取り上げた話題の本。

 元ロスジェネ編集長で作家の浅尾大輔さんが「しんぶん赤旗」で書評を依頼された際に「ほんとうにそうなんだろうか」と問いかけこらががきっかけとなり、今回のトークセッションが企画されました。

 浅尾さんは今回のセッションの為に「4回読んだ」。そのおかげで、古市さんに特徴的な「断定の後に否定したりする」慎重な書き方の意図がセッションを通じて浮き彫りになった。

 古市さんが「資料集・叩き台」というように、一章から三章までは社会学的に「近代若者論」を総括する資料集となっている。「都合のよい協力者」「お客様」として偉い人が捏造してきた「若者論」をあぶり出していく。一方的に叩かれ、利用されてきた若者からの逆襲の書である。 これは僕らが 問われている本です 浅尾さん弁「僕のような左翼。捻くれた左翼がどんな態度を取るかが問われている」。社会に関心ある人々が考えるきっかけづくりを企図して書かれているせいでしょう。

 「不幸な若者」と嘆いてみせながら、その実は「高齢者と若者」を分断する。したり顔の知識人に、やんわりと喧嘩を売っている。「若者」の名を借りて分断する「若者論」。「あるべき社会設計を考えるのに害だ」と断じた。このセッションを通じて、仲間を大切にする傾向とその危うさ。労働組合の現状と今後について問題点の輪郭を描いた。また、問題の当事者性、いかに関心を持ってもらえるのかなどなど話題は多岐に。後半は浅尾さんの経験から現在の雇用・格差についての話題に。

 会場からも活発に発言がありました。組織論のなかで「残って欲しい」組織の側と「残らなくてもいい」という視点の交錯が見られました。「残らなくてもいい」ことを前提にしつつ、どうやったら「残りたくなる魅力的な組織作り」ができかが大切と感じました。

 また、様々な運動を取り上げた過程で、人格を擦り減らすと運動は長続きしない。組織化・継続の重要性が共有された。残りたくなる魅力的な組織づくりは「組織のマネジメントの問題」であることも共通の認識になりました。

 第一回としては内容、参加者数ともに大成功といえるのではないか。社会運動の在り方を考えるきっかけづくり。次なる「草の根の試み」に期待します。(E)